2020年、開催見送りについて

 

 今年の寿町フリーコンサートは、新型コロナウイルス感染症の影響により開催を見送ることが決まりました。40年間、夏祭りの行事の一環として毎年お盆の時期に続けてきたフリーコンサートを休止するのは初めてのことです。

 

 フリーコンサート実行委員会では、感染拡大防止を第一に考え、話し合いを続けて来ました。新型コロナウイルス感染症が完全に収まっていない現在の状況と第2波への不安のなか、どのように寿町フリーコンサートを行えるのか、道を探り続けました。しかし、開催まであと2ヶ月となった今、探し出せない答えを求めて道に迷うよりも、一度立ち止まって休止するという判断になりました。

 

 新型コロナウイルス感染症の影響が広がった春以降、私たちは政府や行政の対策の遅れや無責任な自粛要請などに憤りを感じながら、夏になる頃には感染が収まることを願い、例年通りコンサートを行うことを目標に準備を進めてきました。

 今夏は寿公園を会場にして、遠峰あこさん、李政美さん、タブレット純さんに出演してもらい、第42回の開催となる予定でした。

 

 いま私たちの生活は、新型コロナウイルス感染症とともに大きな変化を強いられています。そして、寿地区の内外から様々な人が集まり、歌い踊り語らうことに象徴されるフリーコンサートも、この大きな課題に直面しています。

 昨年までと同じような形でフリーコンサートを開催できるのか、それとも感染対策とともに新たな形を見出すのか、この先にどのような状況が待っているのか、今はまだ何もわかりませんが、実行委員会では今回の休止を新たな出発点として、寿生活館を拠点にした炊き出しや野宿者訪問などの活動が、これからも継続されていくことを考えながら、フリーコンサートの意味やあり方を改めて考え、道を探っていきたいと思います。

 

 40年の歳月とともに、寿町は「日雇労働者の町」ではなくなりました。しかし、この間に社会全体の格差や貧困問題はより深刻になり、多くの人々が経済政策に翻弄されながら都合よく切り捨てられる不安とともに生きています。今回のコロナ禍で、その現実はより鮮明に姿を現したといえるでしょう。

 目に見えにくい形で社会の分断や人々の孤立が進む中、世の中の矛盾が時代に先駆けて現れるといわれる寿町で、ひとり一人の心を解き放つことのできる瞬間を、私たちはこれからも様々な人々が集まり、皆の力で作り上げる祭りやコンサートを通じて作っていきたいと思います。

 寿町フリーコンサートで、また会いましょう。

 

2020年7月1日

横浜寿町フリーコンサート実行委員会